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 辺りは少し薄暗くなってきています。その一方で、川はきらきらと輝いているのです。両岸は提灯の明かりが周囲を照らしており、色とりどりの灯篭が次々に川を下ってゆくのでした。

 

 とはいえ、ひときわ目を引くのは、その川にすべてが流れていることです。人や生き物は小さな小舟に乗って、物や建物は水面に置かれているように、ゆらゆらと揺れています。下の方が少し沈み、またぷかりと浮かび上がり、そうやってゆっくりと流されていくのです。

「……川下りか?」

「こんなにたくさん?」

 

 舟上の人々は燭台切と長谷部を見て笑顔で手を振っています。燭台切が手を振り返すと、流れゆく鐘楼からごーん……という鐘の音が返事をするように響き渡りました。

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「ねえ僕らの本丸を知らないかい?」

「道に迷ってしまったんだ。背が高くて、いつも微笑んでいる優しい主を知らないか?」

 燭台切と長谷部は川を下っていく者たちに問いかけましたが、みんな首を傾げるばかりです。

21.

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