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「お二人さん。もういい加減、諦めるといい」
男はにやにや笑いを浮かべたまま、小舟のへりに片足をかけ、刃をゆらゆらとさせながら近づいてきます。
「君たちは2015年10月31日を引き延ばし過ぎた。君たちが歪めた時間は膨大で、もはや無視できない」
「……寄るな、鶴丸国永の偽物め!」
立ち上がるなり男を睨みつけ、今度は長谷部が前に出て、素早く刀を抜きました。
「もうみっともない真似はやめようぜ。どうやら本丸に戻ろうと画策しているようだが、2015年10月31日に帰ることなんてできないぜ」
「……嘘だ」
「残念ながら本当さ。君たちの歴史は、君たちが彷徨った分だけ、君たちがいるべきだったはずの本丸からごっそり欠けている。運よく戻れたとしても、時空を狂わせる異常な存在として存在ごと抹消されるのがオチさ。あの石の下で眠った方がましだと思うがな」
「黙れ、俺たちのゆく道を決めていいのは主だけだ!」
(燭台切だけでも、逃がさないと)
38.
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