(……俺は、今まで何を見ていた?)
燭台切は諦めずに長谷部についてきてくれました。燭台切のカバンが壊れても、道が分からなくなっても、長谷部のカバンがあることにも気付いていても。
「ありがとう、長谷部くん。もう大丈夫」
燭台切は、長谷部の手も借りずにさっと立ち上がり、再び刀を構えました。
(誰も待つ人がいない、などと言って俺は、一番近くにいる者を見ていなかった)
見慣れているはずの燭台切の背中が大きく、広く感じます。
(俺が主を待っていたように)
長谷部は目の奥が熱くなってきたのを、拳を握りしめてやり過ごしました。
「……お前は待ってくれていたんだな、燭台切」