top of page
燭台切は驚いて振り返りました。今のは、たしかに燭台切の声ですが、声を出してはいなかったからです。
「長谷部くん、僕はこっちを探すよ」
「じゃあ俺はあっちを探す。主を必ず見つけ出すぞ」
今度は長谷部が肩を震わせて振り返りました。こちらもやっぱり、長谷部の声ですが、声を出していなかったからです。
二人が振り返った先には、なんと二人にそっくりな燭台切と長谷部が仲良く笑っていました。
「あれは、僕たち……?」
「おい燭台切、見てはいけないぞ!」
長谷部は、自分と全く同じ姿の者を見たら死んでしまうという恐ろしい噂を思い出して、慌てて燭台切の左眼を片手で覆いました。そうして、ふとおかしなことに気付きました。
「あの燭台切、左に眼帯をしているぞ」
「本当だ、もしかしてあれは僕らの真似をしている妖かな」
「違いますよ。面白い方たちですね」
平野はくすくすと笑っています。
「あの幸せそうなあなたたちが、うらやましくはないですか?」
「いいや、全く」
「うん、まるで僕のニセモノが現れたような、おかしな気持ちだよ」
平野はちょっと目を丸くしてから、遠くを眺めました。
「素敵な本丸におられたのですね」
6.
bottom of page