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二人が困っていると、向こうからぴんと背筋を伸ばした
おかっぱ頭の少年が歩いてきました。
「平野くん!」
燭台切が呼びかけると、少年は立ち止まりました。
二人へ向けた顔は、平野藤四郎その人です。燭台切の知る平野よりもしっかりと武装していましたが、間違いありません。
「どうしてこんなところに! 城壁の白い漆喰が塗りたての僕らの本丸、帰り道はわかるかい?」
「お前も道に迷ったのか? 切れ長の目で、低い声の理知的な主……ああ早くお会いしたい」
平野はきょとんとしてから、ふふふとおかしそうに口元に手を当てました。どうやら、二人の知る平野とは別刃のようです。
「すみません、笑顔でない方を見たのが久しぶりで。あなた方は幸運ですよ。この町に来れば必ず幸せになれますから」
「どういうことかな?」
「ねえ、長谷部くん」
5.
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