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(……俺は、今まで何を見ていた?)

 

 燭台切は諦めずに長谷部についてきてくれました。燭台切のカバンが壊れても、道が分からなくなっても、長谷部のカバンがあることにも気付いていても。

「ありがとう、長谷部くん。もう大丈夫」

 燭台切は、長谷部の手も借りずにさっと立ち上がり、再び刀を構えました。

 

(誰も待つ人がいない、などと言って俺は、一番近くにいる者を見ていなかった)

 

 見慣れているはずの燭台切の背中が大きく、広く感じます。

橙37.png

(俺が主を待っていたように)

 長谷部は目の奥が熱くなってきたのを、拳を握りしめてやり過ごしました。

「……お前は待ってくれていたんだな、燭台切」

37.

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