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 長谷部はぱっと顔をあげました。燭台切は、いつもと変わらず微笑んでいました。

「……お前は全部、知ってたんだな」

 長谷部はおずおずと懐から刀剣移送装置「カバン」を取り出しました。長谷部のカバンはきれいなままです。

 液晶モニターには、はっきりと『2021/10/31』が浮かび上がっていました。

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「長谷部くん、これで、ここから帰ろう」

「……しかし、俺は本当に、本丸の位置が思い出せないんだ。だから、あんなおかしな世界ばかりに飛んでしまっていた」

 

 燭台切は、ほんの少しがっかりしたように見えましたが、すぐににっこりして明るく言いました。

「じゃあ、君の一番好きな場所を思い浮かべながら」

 長谷部はカバンをぎゅっと胸に抱き、今まで彷徨った中で一番好ましかった世界を頭に描こうとしました。鏡の町、不思議な動物たちがいた森、きらきらと光る川。そのどれもが、長谷部の心に浮かんできては消えていきます。

「……わからない」

 

 首を左右に振ったその瞬間、長谷部は燭台切に抱えられ、後方にある燭台切の小舟へ飛び移りました。

33.

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