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言葉が途切れるなり、渡し守は携えていた櫂を落としてしまいました。
燭台切は長谷部の手を離し、それを拾い上げて差し出したのですが、彼はぼんやりと終点の方を見つめています。諦めて櫂を持ったまま、燭台切がまた長谷部の手を掴もうとした時でした。
「主は、俺を置いていったんだ」
「え?」
藤色の目は、ぼんやりと虚空を見つめていました。
「……結局、迎えに来てはくれなかった。また」
長谷部は小さく呟くと、ふらふらと川へ向かって走り出しました。まるで何かに操られているかのように、本丸一の俊足は、輝く水面に吸い込まれるようにして川の中へ足を踏み入れていってしまいました。
「主、どうして俺を置いていってしまわれた。どうして寺などで自害なされた」
どぷん、と長谷部の両足が浸かります。
「その名を聞いて誰もが恐れたあなたなら、逆臣など俺を使って切り捨ててしまえばよかった」
白い天使の衣装も、川へ吸い込まれていきます。
「どうして俺じゃないんだ……」
25.
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