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 そのうちに波間からせり上がってきた小舟に乗せられてしまいました。

 

「待って、長谷部くん。どこへ行くの、長谷部くん!」

 燭台切は懸命に名前を呼びましたが、長谷部を乗せた小舟は、彼の足と同じく素早く終点へ向かっていってしまいました。

 

「一期くん、借りるよ!」

 燭台切はそう叫んで、返事も待たずに渡し守の小舟に飛び乗って長谷部の後を追いました。

 

 小舟へ乗り込む燭台切の姿に、渡し守ははっと我に返り、しばらくはらはらしながらその行く末を見守っておりました。そうして、二人の姿が見えなくなった頃、ふと耳に残る燭台切の声を反芻して息を飲んだのです。

「ああ、そうか。私の名前は……」

 それきり、渡し守はいなくなりました。

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 やがて、辺りは真っ暗になりました。空には満月がすうと浮かび、両岸にはぽつり、ぽつりと明かりが灯り始めます。二人を乗せた小舟は、色とりどりの光の中をゆっくり、ゆっくりと下って行ったのです。

26.

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