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 森の中を歩いていくと、どこからか声が聞こえてきました。

 

「ねえ!僕らの本丸を知らないかい!? 小さな丘の上にあるんだ!」

「道に迷ってしまったんだ! 目が大きくて、笑うとえくぼが出るかわいらしい主を知らないか!?」

 長谷部と燭台切は声を張り上げましたが、彼らはおしゃべりに夢中でちっとも気づいてくれません。

 三度目でようやく手前にいた男が振り返り、こちらへ近づいてきました。

 木々のアーチをくぐり抜け、にゅっと飛び出した男の頭に、思わず燭台切は声を上げました。

 

「わっ」

 そこには木々が枝を伸ばして作ったアーチがあり、垂れ下がった蔓植物のカーテンの下から、たくさんの足が見えました。わいわいがやがやと盛り上がっている様子です。

14.

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