top of page
そこは森の中でした。草木は色とりどりの花や実をつけています。
長谷部が何気なく木の実をむしりとると、その赤い皮がぐじゅぐじゅと溶け、手に赤い果汁がべたりとつきました。
「まるで血みたいだ」
ふいに長谷部の手は取られ、燭台切の舌が指の間をくすぐりました。
「おいしい。こんなに甘い果物は食べたことがないよ」
長谷部はちょっぴり顔を赤くして呆けていましたが、目を輝かせる燭台切を見て、はっと我に返りました。
「そうだろう。それに、なんだか楽しい気分になってきたぞ」
長谷部は笑顔で刀の鞘を手のひらでたんと叩き、燭台切とつないでいる手をぐいっと力強く引っ張りました。
「さあ行こう、燭台切。お前がいてくれれば、何でも斬れそうな気がしてくる」
燭台切は目をぱちぱちさせてから、ふっと微笑んでくれました。
「もちろん、どこまでも君についていくよ」
13.
bottom of page