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長谷部は刀を握る手にぐっと力を込めました。そして、小舟のへりに足をかけ、彼岸花の咲き誇る大地めがけて飛び移ったのです。
「長谷部くん!?」
長谷部は刀を振りかぶり、そのまま地面を目掛けてすとん、と振り下ろしました。
すると、ハロウィンのおどろおどろしい夜空に、ぴしり、とひびが入ったのです。それに呼応するように、彼岸花たちも左右に分かれ、一筋の道を作ってゆきます。
「……こりゃいいなあ」
鶴丸の苦々しげな声を背に、世界はぱきぱきと音を立てながら、崩れていきました。
「あっちだ!」
長谷部は夕闇の世界にできた綻びを見つけました。
自慢の機動を生かし、いまだ小舟に乗っていた燭台切の元まで駆け戻ると、今度は長谷部が燭台切の手を引いて、一筋の光に向かって走り出しました。
40.
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