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ですから燭台切と長谷部は、本丸らしき建物を見つけるたびに門を叩いていたのです。
「これで何軒目だろう。ねえ長谷部くん、早く帰らないときっと皆も心配するよ」
「わかっている。しかし壊れていてはどうしようもないだろう。……叩けば直ると聞くが」
「それは大昔のブラウン管のテレビだろう? 2200年代の装置は繊細だよ」
「そうか? 主命の邪魔をしておいて、うんともすんとも言わないなど面の皮の厚い奴だ。叩っ斬ってみるのもいいかもしれないぞ」
長谷部が鯉口に手をかけたので、燭台切は慌てて「カバン」を後ろ手に隠しました。
「駄目だよ、長谷部くん。いい加減に――」
ぴかっ。突如、目の前に閃光が走りました。
燭台切は慌てて長谷部の腕を掴みましたが、
次の瞬間、辺りは真っ白な光に包まれ、
何も見えなくなってしまいました。
(長谷部くんを、絶対に離しちゃいけない……)
燭台切は長谷部の手をしっかり握りしめます。
今、ここへつなぎとめておかないと、長谷部はひとりでどこかへ
行ってしまいそうな気がしたのです。
3.
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