top of page

「新しい仲間だ! オレンジは食べたことがある?」

「ようこそ、歓迎するよ! ベリーは好きかい?」

 二人は茂みの中へ引っ張り込まれ、気づけば小さな切り株に座らされ、目の前の大きな切株には果物がどっさり置いてあります。

 周りではキツネやシカ、クマが同じように果物にかじりつきながらにこにこしていました。

綠16.png

「どこから来たの?」

「本丸という所で、白い漆喰の壁はそろそろ塗り替え時期なんだ。知ってるかい?」

「ううん知らない。それより君たちの肌ってつるつるしてるね」

「毛も少ないし、目が前に二つついてる。君たちみたいな生き物、初めて見たよ」

「生き物じゃない。俺たちは刀だ」

 長谷部は、己の切れ味のようにすぱりと言葉を切りましたが、動物たちは不思議そうにしています。燭台切は慌てて付け足しました。

「僕らも君たちと同じさ、人だよ」

 ところが、彼らは目を丸くして顔を見合わせ、口々にしゃべり始めました。

「ヒトだって!」

「なんて恐ろしい!」

「殺される!」

 今度は燭台切と長谷部が驚く番です。

 さっきまで仲良くテーブルを囲んでいた人々が、あっという間に大木の後ろへ駆け込み、怯えた表情で二人を見ています。

16.

bottom of page