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「新しい仲間だ! オレンジは食べたことがある?」
「ようこそ、歓迎するよ! ベリーは好きかい?」
二人は茂みの中へ引っ張り込まれ、気づけば小さな切り株に座らされ、目の前の大きな切株には果物がどっさり置いてあります。
周りではキツネやシカ、クマが同じように果物にかじりつきながらにこにこしていました。
「どこから来たの?」
「本丸という所で、白い漆喰の壁はそろそろ塗り替え時期なんだ。知ってるかい?」
「ううん知らない。それより君たちの肌ってつるつるしてるね」
「毛も少ないし、目が前に二つついてる。君たちみたいな生き物、初めて見たよ」
「生き物じゃない。俺たちは刀だ」
長谷部は、己の切れ味のようにすぱりと言葉を切りましたが、動物たちは不思議そうにしています。燭台切は慌てて付け足しました。
「僕らも君たちと同じさ、人だよ」
ところが、彼らは目を丸くして顔を見合わせ、口々にしゃべり始めました。
「ヒトだって!」
「なんて恐ろしい!」
「殺される!」
今度は燭台切と長谷部が驚く番です。
さっきまで仲良くテーブルを囲んでいた人々が、あっという間に大木の後ろへ駆け込み、怯えた表情で二人を見ています。
16.
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