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「燭台切、カバンを!」

 燭台切は目を白黒させながらも、長谷部のカバンを受け取りました。

 

「あいつの言う通りなら、俺たちが存在していない未来へ行けばいい!」

「どういうことだい」

 

「あいつは、2021年の墓石を叩きながら、『今日この日まで、君たちは彷徨っていた』と言ったんだ。ということは、俺たちが彷徨っていた時間は、墓石に刻まれた2021年10月31日まで」

 長谷部は声の限り叫びました。

「そうか、わかったよ、長谷部くん!」

 燭台切の、長谷部に負けないくらい大きな声は、彼岸花で埋め尽くされた大地に朗々と響き渡りました。

 燭台切の操作により、カバンが光を放ち始めます。

 二人の姿は、流星のように瞬く間に地平線の向こうへ消えていってしまいました。

「これは驚かされたな……」

 ひとり取り残された鶴丸は、二人の名前が刻まれた墓石に頬杖をつき、しばらく彼らの姿を眺めていましたが、

「ならず者が墓を掘り返して、俺を見つけ出すのに賭けるとするか」

と独り言ち、再び目を閉じたのです。

 やがて彼の姿は、墓石と一緒に跡形もなく消えてしまいました。

 ところで二人の姿は? どうやら光に包まれていったようなのです。

「僕らは、『明日』に行こう! 『2021年11月1日』へ!」

41.

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