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「ねえ、君たちもここにいようよ」
背後から声をかけられ、二人は驚いて振り向きました。
いつの間にか、また鏡の燭台切と長谷部が生まれ、そこに立っていたのです。鏡に沿って歩く二人の隣に、鏡に映る二人も並んでついてきます。
「もう行くよ。ごめんね」
燭台切はきっぱりと答え、壊れたカバンを胸の高さまで持ち上げてみせました。
鏡の燭台切の手には何もありません。
「どうしてだい、ここならずっと幸せでいられるのに」
その言葉に、燭台切の黄金色の瞳が揺れました。
鏡の向こうの自分みたいに生きられたら、なんて素敵なことでしょう。ずっとこの町でいれば、ずっと間違わずに幸せでいられるのです。
11.
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