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 平野が「ほら」と指をさした先には、笑顔で歩く平野がいました。

「あの僕は、幸せそうでしょう。うまくいったんです」

 笑顔の平野は、近くにいる平野のことには気づいていない様子でした。

「平野くんは、それでいいの?」

 燭台切がおそるおそる尋ねると、平野は黙ってうなずいた後、覚悟を決めたように口を開きました。

 

「あれも僕ですから。主をお守りできた僕だけが、この町に残ってゆけばいいんです」

 平野は微笑むと、二人が止める暇もなく本丸の間に消えていきました。

10.

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